可能性の素材「タングステン」を世界へ Vol.1
ものを削り、切り出す超硬工具の主原料「タングステン」。聞きなじみはないかもしれません。しかし鉄や銅、アルミニウムなどと同じように、私たちに身近な自動車や航空機、医療など あらゆる産業に欠かせない「可能性」を秘めた素材です。
三菱マテリアルグループは、新技術の開発やリサイクル推進でタングステンの資源循環を強化するとともにその「可能性」を広げ、世界が認めるタングステン製品のリーディングカンパニーを目指しています。
三菱マテリアルグループは、新技術の開発やリサイクル推進でタングステンの資源循環を強化するとともにその「可能性」を広げ、世界が認めるタングステン製品のリーディングカンパニーを目指しています。

タングステン鉱石
タングステンという名称の由来は、スウェーデン語の「重い石(tung sten)」。
タングステンは重いだけではなく、非常に硬くて、熱に強いという優れた点があります。
多くの機能を備えたタングステンは、ものづくりの“縁の下の力持ち”として、身の回りのあらゆる分野で活躍しています。
こんなところにもタングステンの力
タングステンで製造される超硬工具は、硬い金属を切ったり削ったりして、形を変える「切削加工」に使われます。特に、金属部品などの加工には不可欠。例えば、私たちに身近な自動車のエンジンやトランスミッション、航空機のジェットエンジンの加工に使われています。

自動車のエンジンやトランスミッションに

航空機のジェットエンジンに
超硬工具としてだけでなく、身近なものの「材料」としても使われています。例えば、パソコンやスマートフォンの配線の材料として使われていたり、重さを生かしてゴルフクラブの重心材としても使われていたりします。

パソコンやスマホの配線材料に

重さを生かしゴルフクラブの重心材にも
タングステンの秘める「可能性」
実は社会のさまざまな場面で活躍しているタングステン。
あらゆる素材の中から、なぜ、タングステンが選ばれるのでしょうか。その特徴や強みに迫ります。
あらゆる素材の中から、なぜ、タングステンが選ばれるのでしょうか。その特徴や強みに迫ります。
3000℃以上の熱に耐えられる強さ
タングステンは熱に強い金属です。融点は約3400℃と、金属材料の中では最高の融点を誇ります。一方で私たちに身近な鉄は、1500℃程度で溶けてしまうので、比べると非常に耐熱性が高いことが分かります。切削加工では大きな衝撃がかかり、800℃以上の熱が発生しても耐えられるため、切削工具の材料として活躍します。

ダイヤモンドに次ぐ硬さ
タングステンは非常に硬い金属です。世界で最も硬度の高い物質はダイヤモンドですが、硬度を表す「モース硬度」はダイヤモンドが10であるのに対し、タングステンはそれに次ぐ硬度9。炭素と結びつくと、さらに硬くなります。例えば、水晶(クォーツ)は硬度7、オパールは硬度6、ガラスは硬度5であり、モース硬度を見 るとタングステンの硬さが分かります。

鉄の2.5倍の重さ
タングステンは非常に重い金属です。金属材料の中で最も重い金が比重19.32で、タングステンは19.30。例えば鉄は7.85なので、タングステンは鉄のおよそ 2.5倍の重さ。その重さを生かし、ゴルフクラブや釣り用のオモリにも使われています。

最強の耐熱金属!
「タングステン」の粉末です
取り巻く「環境」
タングステンは世界のあらゆる産業で可能性が期待され、需要増加が見込まれる一方で、調達のリスクが高くなりつつある素材でもあります。その市場規模や埋蔵量などに迫ります。
タングステンの市場規模
タングステンは重量で市場規模を表すことが多く、2022年のタングステン粉・タングステンカーバイド粉の世界の推定市場規模は、約 10万トン、超硬工具向けが約60%を占めます。中期経営戦略2030では、電子部品向けを中心に、30%近くタングステン供給を増やす目 標を掲げています。その背景として、生成AI の需要拡大、xEV 用電池の需要増加、今後期待される金属積層造形向けの需要を取り込むことを見込んでいます。

世界のタングステン埋蔵量
タングステンは、約50%が中国に埋蔵されています。さらに、供給面では世界の85%の供給量を中国に依存しています。こうした中では、今後、世界情勢の影響でタングステンが調達できなくなるリスクを低減することが極めて重要です。三菱マテリアルグループは、2030年までに超硬工具製造におけるリサイクル原料比率80% 以上の達成を目指しています。
