現場の声が形に-スロットダイが支える次世代太陽電池の実用化
次世代エネルギー技術として注目を集めるペロブスカイト太陽電池。その進化の背景には、日々試行錯誤を重ねる技術者たちの挑戦と、製品の可能性に期待を寄せるユーザーの声があります。三菱マテリアルグループは、塗布工具「スロットダイ」や成膜用インクの開発を通じて、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた性能向上に挑戦してきました。今回は、塗布工具「スロットダイ」の技術を磨く開発者たちの想いや、実際に製品に触れたユーザーのリアルな声を通じて、ペロブスカイト太陽電池が描く未来の姿に迫ります。
技術開発の歴史
三菱マテリアルハードメタル株式会社のスロットダイは、40年以上にわたり多様な分野で活用されてきました。始まりは1981年、三菱金属株式会社東京製作所(現・三菱マテリアル筑波製作所)にて、超硬工具メーカーとしてのノウハウを応用し、世界初の超硬刃先付きスロットダイを開発。オーディオテープ(カセットテープ)やビデオテープの製造に使用され、フィルムなどの基材に材料を均一に塗布する工程で活躍しました。
その後、MMCリョウテック株式会社(現・三菱マテリアルハードメタル株式会社)に技術が引き継がれ、2000年頃には液晶ディスプレイ用途に展開。1mから3m超の長尺スロットダイが求められるようになり、厳しい精度要求に応えるため、熱処理や切削加工,研削加工の工程を根本から見直し、高精度な製品を提供してきました。
その後、MMCリョウテック株式会社(現・三菱マテリアルハードメタル株式会社)に技術が引き継がれ、2000年頃には液晶ディスプレイ用途に展開。1mから3m超の長尺スロットダイが求められるようになり、厳しい精度要求に応えるため、熱処理や切削加工,研削加工の工程を根本から見直し、高精度な製品を提供してきました。
印刷技術を応用した「塗布工程」
製品化への道のりと課題
ペロブスカイト太陽電池はまだ開発途上であり、当初はスロットダイの使用可能性すら不明でした。限られた情報の中で、塗布テストや流体解析技術など、当社の技術・知見を駆使して情報を収集。塗布液の性状や基材との相性、膜厚のばらつきなど、多くの技術的課題が明らかになりました。
特にペロブスカイト太陽電池の構成材料は非常に繊細で、塗布された膜厚が不均一では光の吸収ムラや電流の流れにムラを引き起こし、発電効率の低下につながります。
ユーザーから求められたのは、乾燥前で数μm(マイクロメートル・1μmは髪の毛の太さの約100分の1)、乾燥後で数十nm(ナノメートル・10μmはμmの100分の1)という極めて高精度な膜厚制御。製品幅方向および塗工方向の両方で均一な塗布が求められました。
特にペロブスカイト太陽電池の構成材料は非常に繊細で、塗布された膜厚が不均一では光の吸収ムラや電流の流れにムラを引き起こし、発電効率の低下につながります。
ユーザーから求められたのは、乾燥前で数μm(マイクロメートル・1μmは髪の毛の太さの約100分の1)、乾燥後で数十nm(ナノメートル・10μmはμmの100分の1)という極めて高精度な膜厚制御。製品幅方向および塗工方向の両方で均一な塗布が求められました。
供給口から入った塗布液が数十ナノメートルの薄さで塗布されます
当社の長年培ったノウハウを生かし、お客様の塗布液や塗工条件にマッチした最適なマニホールド形状等をご提案します
この非常に高いハードルをクリアするため、液質に応じた最適材質を検討し、テスト塗工機によるデモ試験や解析ソフトを用いた形状選定を通じて設計提案を行いました。これにより、長寿命かつ高精度なスロットダイの開発と、理想的な塗布精度の実現に成功しました。
お客様からは、精密塗布による製品性能の向上に加え、長寿命化によってメンテナンス頻度が減少し、コストメリットも創出できたと評価いただいています。
今後も現場の声や技術的知見をもとに、ペロブスカイト太陽電池の更なる進化のため最適な構造・材質・加工精度を追求していきます。
お客様からは、精密塗布による製品性能の向上に加え、長寿命化によってメンテナンス頻度が減少し、コストメリットも創出できたと評価いただいています。
今後も現場の声や技術的知見をもとに、ペロブスカイト太陽電池の更なる進化のため最適な構造・材質・加工精度を追求していきます。
実用化に向けた想いと今後の展望
脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーへの関心が世界的に高まる中、ペロブスカイト太陽電池は、軽量・柔軟・低コストといった特性を備え、従来のシリコン型太陽電池では難しかった壁面や窓、曲面などへの設置が可能です。設置場所の自由度が高く、都市部や既存建物への展開も期待されている事から、次世代エネルギーとして大きな可能性を秘めています。
スロットダイは、かつてオーディオテープや液晶ディスプレイなど、私たちの生活を豊かにする製品の製造プロセスに使用されてきました。今、再びこの技術が「未来のエネルギー」を支える役割を担おうとしています。
三菱マテリアルグループは、長年培ってきた技術と新たな挑戦を融合させ、社会課題の解決に資する製品・ソリューションの提供を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。ペロブスカイト太陽電池の普及を通じて、より豊かで環境にやさしい持続可能な未来の創造に寄与してまいります。
スロットダイは、かつてオーディオテープや液晶ディスプレイなど、私たちの生活を豊かにする製品の製造プロセスに使用されてきました。今、再びこの技術が「未来のエネルギー」を支える役割を担おうとしています。
三菱マテリアルグループは、長年培ってきた技術と新たな挑戦を融合させ、社会課題の解決に資する製品・ソリューションの提供を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。ペロブスカイト太陽電池の普及を通じて、より豊かで環境にやさしい持続可能な未来の創造に寄与してまいります。
