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2023.07.06

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特集:限りある金属資源を、未来につなぐ。 vol.4

識者に聞く金属資源の未来
人と技術を育むことが金属資源循環を次世代につなぐ

京都大学大学院工学研究科材料工学専攻 教授
宇田 哲也さん
専門分野は材料熱力学、燃料電池、チタン製錬、非鉄金属製錬など。京都大学にて、三菱マテリアルによる寄附講座「非鉄製錬学講座」の教授を兼任し、社会人や大学生らに教育・啓蒙活動を行う。

銅をはじめとする非鉄金属の価格は近年、上昇傾向にあります。報道などで目にする「非 鉄金属が足りない」という予測は、厳密には需要と供給のバランスが崩れる可能性があるということ。今後も需要拡大が見込まれるからこそ、金属資源を確保するためには、使用済み製品に含まれる金 属「都市鉱山」(E-Scrap)からも資源を循環させることが重要です。日本国内ではかつて多くの金属を産出していました。しかし現在、例えば国内の銅鉱山は全て閉山しており、金属資源は特定の国からの輸入に頼っている状態です。そのため今後、政治的リスクが生じ、輸入が途絶えた場合にも備える必要があります。こうした視点からも、国内で都市鉱山の金属資源循環サイクルを確立させることが、産業の安定維持につながります。金属資源循環の拡大は資源の有効活用につながります。都市鉱山は鉱石よりも銅の濃度が高いだけでなく、金・銀などの貴金属やパラジウムなどのレアメタルも高濃度含む利点があります。一方で、この都市鉱山は将来的に確保できる量が見通しづらいという課題があります。そのため近年、金属資源の獲得競争が問題となり、政治や行政の視点も含めた、安定的な資源供給の仕組みづくりも必要になります。金属資源循環のキーカンパニーとして、三菱マテリアルに期待することは数多くあります。三菱マテリアルは三菱連続製銅法という独自 技術を持ち、技術開発にチャレンジし続け、製錬プロセスを確立させてきました。今、都市鉱山が鍵を握る時代となったからこそ、都市鉱山により適した製錬プロセス等の研究開発を行い、進化した新技術を世の中に出し続ける。そんなチャレンジ精神を大切にしてほしいです。
また三菱マテリアルには非鉄製錬に関する教育活動として、京都大学で寄附講座を開いていただいています。講座を始めた当時に、三菱マテリアルの副社長だった飯田修さんからは「この講座は非鉄製錬業界全体のためにやってください」と激励をいただきました。その思いに応えるためにも、社会発展の根幹をなす非鉄製錬の未来を担う人材の教育と育成を、この講座で担ってまいります。
金属資源循環の拡大には、次世代に製錬技術をつないでいくことが必要です。技術そのものだけではなく、「自ら考えて行動する姿勢」も伝える。技術者がもっとチャレンジし、失敗できる環境づくりをする。それが製錬技術を進化させ、未来につなぐはずです。
学び続けることこそが、技術を支える筋肉となります。今後も産学一体となって、未来を担う人づくりを進めていきましょう。