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2023.07.06

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特集:限りある金属資源を、未来につなぐ。 vol.1

金属資源は将来、需要と供給のバランスが崩れる可能性があります。
特に銅は、社会の脱炭素化のために欠かせない素材として需要が増えていますが、実は鉱山からの供給量減少も予測されています。では、限りある金属資源を未来につなぐために、私たちには何ができるのか。その切り札こそが、今ある金属を繰り返し使い続ける「金属資源循環」です。
銅の需要は、社会の「脱炭素化」により増加が見込まれます。電気を通しやすい銅は、xEVや再生可能エネルギーの発電設備や送電の部品として必要不可欠なのです。
IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)によると、2020年代後 半からは需要と供給のバランスが崩れ、2030年には約550万t 不足すると予測されています。南米の鉱山などで供給量が増えている分や、建設中の新規鉱山からの供給量を足しても、将来の需要には追いつかない見通しです。限りある金属資源を未来につなぐために、鍵を握るのが「金属資源循環」。三菱マテリアルは中期経営戦略2030(以下、中経2030)にて、目指す姿を「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」と掲げました。長年培った資源循環の力で、三菱マテリアルはこの課題に立ち向かいます。

限りある金属資源を社会に届けるために

製錬や家電リサイクルで長年培った技術が強み

三菱マテリアルは製錬で培った有価金属を分離・回収する技術や経験と、家電リサイクルで培った解体・選別技術を融合し、「金属資源の循環システム」を構築します。中経2030ではこの「金属資源の循環」に重点的に取り組み、循環の対象範囲と展開地域、および規模を同時に拡大することで、バリューチェーン全体の成長を実現させます。 三菱マテリアルには、使用済みの製品を回収して再生・再利用する「静脈型事業」、製品を生み出す「動脈型事業」があります。
事業のモノの流れを血液循環に例えてこう呼んでいます。このうち使用済みの廃棄された製品をリサイクルプロセスに投入し、原料や素材として再利用していく「静脈型事業」においては、三菱マテリアルが製錬や家電リサイクルで長年培ってきた 技術を活かせることが強みです。

天然資源を確保

鉱山投資を続けて銅精鉱確保量50万t へ

金属資源を鉱山から確保し、社会に届ける。三菱マテリアルでは、クリーンな銅精鉱の安定調達を目的とした、海外銅鉱山への投資を展開しています。
私たちが権益を保有する操業中の鉱山は、カナダのカッパーマウンテン鉱山、チリのマントベルデ鉱山、ロス・ペランブレス鉱山、エスコンディーダ鉱山の4カ所で、銅精鉱確保量は現在15万t ほど。鉱山開発は古くから行われており、開発が容易な場所の採掘は完了しているところが多いため、鉱山の生産コストは上昇していることが課題です。コバルトなどのレアメタルも需要が拡大する中で供給が不足している状態です。そこで三菱マテリアルは、中規模銅鉱山 への新規参画などに取り組み、銅精鉱確保量を現状の15万tから、2030年度には 50万t 以上に拡大することを目標としています。これは、直島・小名浜製錬所の銅精鉱処理量の約30%に相当します。

技術開発の力で 希少資源も回収する

技術開発の力で、資源の課題を解決する。三菱マテリアルは、既存の製錬技術開発拠点に資源技術の開発機能を加えた「鉱業技術研究所」を2020年に設立。クリーンな銅精鉱を優位に安定調達するための技術開発を強化しています。既存の操業鉱山の課題として、採掘の深部化に伴う鉱石品位(金属含有量)の低下や、銅精鉱の中の不純物増加が懸念されていました。そこで三菱マテリアルは、この不純物を除去する技術開発などで、資源技術を強化。これにより、金属鉱物の分析から金属リサイクル技術までの一貫した開発体制を構築でき、金属鉱物のあらゆる技術課題に、迅速に対応していきます。

資源循環で確保

リサイクル技術を活用し金属資源の回収を強化

三菱マテリアルは、非鉄金属の資源循環におけるメジャーかつ最先端の事業者を目指しています。E-Scrapに限定しない非鉄金属資源を含むリサイクル品の処理を強化し、世界トップクラスを誇る電気銅供給能力をもとに、資源循環ループの中でコアサプライヤーとなることを目標とします。
私たちの強みの一つは、銅・貴金属・鉛・錫製錬所で構成される「マテリアルグリッド」です。これらの非鉄金属を中心としたバリューチェーンの連携を強化することで、資源循環領域を広げていきます。さらに、新たなプロセス開発によって資源循環の効率性を高め、競争力強化と事業拡大を早期に実現します。
また、廃棄されるリチウムイオン電池(LIB)にも注目しています。xEV が社会に浸透していくことで、2030年には社会で使われるLIBの数量が数十倍に増加します。そこで三菱マテリアルは、LIBから電池材料までの一貫したリサイクルプロセスを早期に開発することや、E-Scrapビジネスで構築したネットワークを活かしたブラックマス※の集荷などに取り組みます。
中経2030では、家電や自動車から分解した部品類を集約して、リサイクルに適した処理を行う拠点「国内リサイクルセンター」の構築を、重要施策の一つと位置付けています。このように、あらゆるリサイクル品の処理を拡大することで、金属資源循環を加速させていきます。
※ LIBを放電・乾燥・破砕・選別したリチウム、ニッケル、コバルトの濃縮滓

PICK UP
三菱マテリアルの強み 「マテリアルグリッド」とは?

近年はリサイクル品の処理拡大に伴い、E-Scrap やバッテリーなど、金属資源にリサイクル可能な「原料」の種類が増えてきました。三菱マテリアルでは、銅製錬のほか、貴金属製錬、鉛製錬、錫製錬などさまざまな製錬事業を国内外で展開しており、各製錬拠点で扱う金属の種類も増えてきています。そこで、複数の製錬拠点が「網の目(」グリッド)のように結びつき、拠点間で有価金属を交換し合うなどして、欲しい素材を効率的に回収することを「マテリアルグリッド」と呼んでいます。こうした製錬拠点を連携させるネットワークが、三菱マテリアルの強みです。