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2023.01.05

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技術の力で未来をつくる Vol.4

産業の動脈と静脈をつなぎ、循環型社会を実現

当社と共同研究を行う東北大学の吉岡敏明先生と上席研究員の小日向が、共に目指す未来について語り合いました。
吉岡 敏明さんPr ofile
2005 年より東北大学大学院環境科学研究科教授。廃棄物資源循環学会会長、新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO 技術委員、科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業アドバイザーなど数々の要職を務める。

小日向

当社と吉岡先生の研究室は、資源・物質循環社会の実現を目指す共同研究を行っていますが、改めて先生の研究が目指していることについて教えてください。

吉岡

私の研究室では廃棄物の化学リサイクル研究を通じて、資源・物質循環型社会の実現を目指しています。共同研究では、アカデミアの研究成果を企業の事業展開に結びつけるため、生産現場の知見をご提供いただいています。循環型社会を実現するためには、新しいものをつくる動脈とリサイクルする静脈をつなげなければなりません。

小日向

当社は以前から銅を中心とした非鉄金属の資源循環に 取り組んできました。近年は鉱山資源の枯渇や環境問題から都市鉱山に注目し、E-Scrapの活用比率を高めています。吉岡先生は、廃プラスチックの資源循環に取り組んでいらっしゃいますね。

吉岡

E-Scrapをはじめ、世の中の多くのものは金属とプラスチックが合体しています。プラスチックをリサイクルする際、金属があるとやりにくいため、三菱マテリアルをはじめとする複数の企業と共同で、有用金属等回収技術への応用も視野に入れたプラスチックのリサイクル技術を研究しています。技術的には確立できますが、問題は資源循環のシステムをつくることです。長年染みついたリニアエコノミーの判断基準があると、サーキュラーエコノミーは成り立たない。発想を変えていかなければなりません。

小日向

東北大学大学院環境科学研究科は、環境政策学などの社会科学も取り入れ、幅広い分野が融合しています。環境問題は複雑に絡み合い、技術だけでは循環型社会を実現できません。アカデミアと企業の対話も不可欠ですね。

共同研究の相手として、三菱マテリアルにはどのようなことを期待していますか。

吉岡

フィールドが幅広く、社会とさまざまな接点があることが大きな強みだと思います。しかしその一方で、大組織ゆえにスピード感に弱点があったり、同じ社内でも分野が違うとお互いの研究内容を深く知らないといった弊害もあるのではないでしょうか。もっと横串が通れば、産学連携の効果もさらに期待できそうです。

小日向

おっしゃる通りです。そこで今、研究開発の風土改革を進めていて、組織体制を変更し、ITツールも活用してコミュニケーションの活性化を図っています。

先生から産業界へ提言したいことはありますでしょうか。

吉岡

過去を振り返ると、静脈産業は儲からないという理由で頓挫した事業や研究があると思います。しかし今なら実現可能かもしれません。ものづくりの世界とは異なり、資源循環は過去の研究成果を活用できる分野です。しっかりリサーチしてみてください。

小日向

過去の論文は古い技術だという固定観念を捨てなければなりませんね。先輩たちが長年蓄積してきた資源循環の知見を再活用していきたいと思います。

吉岡

日本の企業は元気がないと言われて久しいですが、研究そのものは遅れていませんし、技術の基盤もあります。その実力をぜひサーキュラーエコノミーに組み込んでいきましょう。三菱マテリアルさんも多くの素晴らしい技術をお持ちだと思いますので、形になる前のコンセプトの段階から世の中に積極的にアピールし、市場に先手を打ってください。

小日向

先生のご期待を受け止め、大学の最先端の研究成果を事業化し、循環型社会の実現に貢献します。