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2025.08.28

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100年後の美しい森林を目指して ―三菱マテリアルの社有林におけるサステナビリティの取り組み

はじめに

三菱マテリアルは、日本国内有数の大規模森林所有者として、全国30か所に約13,000haの社有林「マテリアルの森」を管理しています。かつては鉱山や炭鉱の坑木供給を目的として森林を保有していましたが、現在では木材の持続可能な供給、CO2の吸収・固定推進、生物多様性の保全、地域への憩いの場の提供など、森林の公益的機能を最大限に発揮することを目指しています。

当社社有林の分布と面積

社有林のゾーニングと管理方針

「マテリアルの森」は、水土・生態系保全区域、保健文化利用区域、天然生林択伐利用区域、資源循環利用区域の4つに区分され、それぞれの区域に応じた管理方針が定められています。これにより、地域や環境条件に応じたきめ細かな森林管理が可能となり、「天然力を活かし、機能・活用の最大化を図る美しい森林」の実現を目指しています。

循環型社会への貢献

三菱マテリアルは、社有林の間伐など森林整備から産出された木材を建築用材や再生可能エネルギー原料として社会に供給しています。人工林では伐採と植林を循環させ、天然生林では択伐と天然更新を通じて広葉樹材の持続可能な供給を目指しています。また、スイスの森林管理者(フォレスター)を招聘し、天然生林施業に関する知識と技術の研鑽にも努めています。

地域社会への貢献

社有林は地域の重要な環境要素として、レクリエーションや教育の場としても活用されています。
札幌市の手稲山林では市民の森やキャンプ場として開放され、地元NPOや大学の研究フィールドとしても利用されています。近隣の保育園へ自然とのふれあいの場として社有林を提供し、社有林のある市町の小学生を対象とした教育プログラムの中で森林の授業を実施したほか、「マテリアルの森」を林業体験のフィールドとして提供しました。
また、2016年に台風被害に遭った北海道森町町有林の復旧整備に取り組み、2018年以降北海道胆振東部地震で被災した厚真町の保育園には、社有林の木を活用して製作したクリスマスツリーを寄贈しています。植樹祭や育樹祭などの環境イベントを通じても、地域住民との交流を深めています。

マテリアルの森での森林体験プログラム(札幌市子ども会育成連合会主催SDGsイベント)

植樹祭で栗の木を植える様子(北海道森町)

脱炭素社会への貢献

社有林は年間約4.4万tのCO2を固定しており、これは約2万3千人分の排出量に相当します。若齢から中齢期の樹木のCO2固定能力を活かすため、適切な伐採と植栽を行い、森林の再生を図っています。また、間伐材の積極的な活用により、長期的なCO2固定にも貢献しています。

※ 試算値の求め方: 成長量(m3)×材容積重(t/m3)×炭素換算率×樹幹に対する木全体比×CO2分子量/炭素分子量

生物多様性の保全

社有林では、尾根林や河畔林などの緑の回廊を保護し、皆伐を制限することで生物多様性の保全に努めています。環境に配慮した人工林施業や天然生林施業を導入し、森林構造の多様化を図ることが多様な生物の生息環境確保に繋がると考えています。また、希少動植物のモニタリング活動を通じて、生息環境への影響を評価し、必要に応じて施業計画を見直しています。
加えて環境省の30by30目標に貢献する取り組みとして、2023年に手稲山林全域において自然共生サイトの認定を取得しています。このうち保護地域を除いた区域が2024年にOECM(※)として国際データベースに登録されています。

※Other Effective area-based Conservation Measures:公的な保護地域以外の企業林などで生物多様性保全に資する地域

おわりに

三菱マテリアルは、「100年後の美しい森林」を目指し、社有林の持続可能な管理と公益的機能の最大化に取り組んでいます。これらの活動は、循環型社会の構築、地域社会との共生、地球環境の保全に向けた重要な一歩であり、今後もネイチャーポジティブな社会の実現に向けて貢献していきます。