「自律する組織」への挑戦 ──Mitsubishi Materials(Thailand)社長 長屋秀彦が語る、変革と未来
三菱マテリアル加工事業カンパニーの製造・販売拠点のひとつであるMitsubishi Materials(Thailand)Co., Ltd.(以下、MMTH)は、タイにおけるものづくりの最前線を担う重要な拠点です。2023年4月に社長に就任した長屋秀彦は、現地社員の自律性を高める組織改革に取り組み、MMTHを「議論し、行動する会社」へと導いています。社員の力を引き出し、未来を切り拓くために何が必要なのか。MMTH社長の長屋に、組織づくりとその根底にある想いを聞いた。
世界最高水準の製造拠点を目指して
1995年にタイ・アユタヤ県に設立されたMMTHは、2025年8月には30周年を迎えます。現在1,396名のタイ人社員と13名の日本人駐在員が在籍しており(2025年3月末時点)、加工事業カンパニーの中でも最大級の超硬切削工具の製造・販売を担う拠点として世界中のお客様に製品を供給しています。
中期経営戦略2030において、MMTHは「世界最高レベルの品質を競争力のある価格と納期で安定供給する」ことを使命としています。安全・環境・人権・法令への配慮を前提に、最新設備による安全確保と環境対策、自動化推進による省人化、 歩留向上、サイクルタイム短縮、品質向上などを推進し、地域社会との共存共栄を目指しています。
中期経営戦略2030において、MMTHは「世界最高レベルの品質を競争力のある価格と納期で安定供給する」ことを使命としています。安全・環境・人権・法令への配慮を前提に、最新設備による安全確保と環境対策、自動化推進による省人化、 歩留向上、サイクルタイム短縮、品質向上などを推進し、地域社会との共存共栄を目指しています。

MMTHの外観。環境対策でソーラーパネルを設置し、使用電力の約7%を賄う
「Discuss」をキーワードに、組織文化を変える
私が社長に就任して最初に感じたのは、社員が自分の意見を口にしない風土でした。日本の製造拠点と同じ品質を維持するために、厳格なルールが敷かれていたこともあり、現場では“指示を待つ”姿勢が当たり前になっていたのです。
だからこそ、私が“Discuss:意見を言い合いましょう”という言葉を繰り返して伝えました。自分の考えを持ち、それを仲間と交わすことが、組織の自律につながると信じています。会議や安全ミーティングでは発言を促し、心理的安全性を高めるために1-on-1やラウンドテーブルも導入しました。最初は遠慮がちだった社員も、少しずつ自分の言葉で話すようになり、今では議論が活発化しています。
だからこそ、私が“Discuss:意見を言い合いましょう”という言葉を繰り返して伝えました。自分の考えを持ち、それを仲間と交わすことが、組織の自律につながると信じています。会議や安全ミーティングでは発言を促し、心理的安全性を高めるために1-on-1やラウンドテーブルも導入しました。最初は遠慮がちだった社員も、少しずつ自分の言葉で話すようになり、今では議論が活発化しています。

会議で議論するマネージャー層の社員

製造現場にて作業の安全について議論する社員
更なる変革 ―組織再編とタイ人幹部の登用
2024年10月、MMTHでは大きな組織改革を実施しました。これまで日本の製造拠点の製品をそれぞれ製造していた2つの工場を統合し、新たに「製造部」を設けました。この再編によって、知見の共有と技術の融合が進み、従来発生していたムダを省くことができました。2つの工場それぞれがもっていた文化を融合・昇華させるための、最適な土台が整ったと感じています。今後は、実務の中でアウトプットをだせるように、人レベルでの融合を進めていきます。

5Sにも力を入れている。綺麗に収納された道具

5S活動の掲示版
また、経営幹部である製造部長と事務部長にタイ人社員を起用しました。これまで会社の方針を決める重要な意思決定プロセスに関与していなかったタイ人社員が関与することで、組織の自律性が高まりました。彼らが主導した業務プロセスの見直しは、短期間で大きな改善成果を上げています。社員の理解と協力のもと、持続可能な運営体制の構築に向けた一歩となりました。

敷地内にあるスピリチュアルハウス。出勤時に立ち留まり手を合わせている社員も多い。生花や果物、お菓子などのお供え物も絶えない
「教わる側」から「教える側」へ
2025年7月1日、MMTHは旧社名MMC Tools (Thailand) Co., Ltd.からMitsubishi Materials(Thailand)Co., Ltd.に社名を変更し、新たなスタートを切りました。30年にわたる成功と失敗の経験を糧に、技術と人材の両面で進化を続けています。今後は、加工事業カンパニーの他の製造拠点に向けて、MMTHの知見を積極的に発信し、「教わる側」から「教える側」への転換を目指していきます。
さまざまな変革を経て、タイ人社員の意識は確実に良い方向に向かっていると感じています。その表れとして「変化を恐れず挑戦したい」「成長したい」という声が社員から自然に聞かれるようになりました。MMTHは確かな一体感のもと、より良い明日の創造に向けて歩みを進めています。
さまざまな変革を経て、タイ人社員の意識は確実に良い方向に向かっていると感じています。その表れとして「変化を恐れず挑戦したい」「成長したい」という声が社員から自然に聞かれるようになりました。MMTHは確かな一体感のもと、より良い明日の創造に向けて歩みを進めています。

新社名が掲げられた建屋の前にて。前列中央は三菱マテリアル加工事業カンパニープレジデントの小原(白シャツ)、その左隣がMMTH社長の長屋。その他、日本人駐在員およびタイ人マネージャーが並ぶ
三菱マテリアルグループは、2030年に向けた“私たちの目指す姿”として「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを掲げています。
その“私たちの目指す姿”を実現するための行動の指針として、「挑戦」、「変化」、「成長」、「賞賛と感謝」、「より良い明日」を価値観とし、これらの価値観が紡ぐストーリーを、「挑戦し、変化を起こし、共に成長していく。その成長を称賛と感謝の言葉で後押しし、より良い明日をつくっていく。」と定めています。
その“私たちの目指す姿”を実現するための行動の指針として、「挑戦」、「変化」、「成長」、「賞賛と感謝」、「より良い明日」を価値観とし、これらの価値観が紡ぐストーリーを、「挑戦し、変化を起こし、共に成長していく。その成長を称賛と感謝の言葉で後押しし、より良い明日をつくっていく。」と定めています。


自身の行動とグループの価値観を結びつける対話の場として「価値観ワークショップ」を実施。価値観のアイコンを手にする製造部(左)と事務部(右)の社員